整備工場の請求書には、部品代と工賃のほかに、車検の重量税や印紙代のような「お客様の代わりに払ったお金」が混ざります。2023年10月からはインボイス制度の記載事項も加わり、汎用の請求書ソフトやエクセルの様式では手当てしきれない場面が増えました。この記事では、車屋・整備工場が請求書ソフトを選ぶときに確かめたいことを、国税庁の「適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和8年5月改訂版)を読みながら整理します。2026年10月1日から免税事業者からの仕入れの控除割合が80%から70%に下がった点も扱います。
自動車整備の請求書ソフトに必要な情報
請求書を作るだけなら、表計算ソフトでも市販の請求書ソフトでもできます。整備の現場で困るのは、請求書の前後にある情報とのつながりです。同じお客様が2台の車を持っていれば、どちらの車の作業かを登録番号で区別しなければなりません。車検のときは、課税される整備代金と、重量税・自賠責保険料・検査手数料の印紙代のような法定費用を分けて載せます。請求したあとは入金を確かめ、次の車検や点検の時期を案内に回します。
- どの車両(登録番号・車台番号)に対する作業か
- 部品代と工賃の内訳
- 課税される金額と、立替金として扱う法定費用の区分
- 次回の車検満了日や点検時期
- 前回同じ作業をした日と内容
これらが請求書と別のファイルやノートに分かれていると、請求のたびに車検証や過去の伝票を探すことになります。転記の回数が増えるほど、金額や登録番号の写し間違いも増えます。顧客と車両と整備履歴と伝票が一つのデータでつながっている整備専用のソフトを選ぶと、こうした手作業がまとめて減ります。
整備の請求書ソフトと汎用ソフトの違い
自動車整備の請求書ソフトは、請求書を顧客と車両と整備履歴に結びつけて管理できる点で汎用の請求書ソフトと違います。整備の請求書には、登録番号で特定した車両、部品代と工賃の内訳、車検の法定費用と課税される整備代金の区分、次回の車検満了日が関わります。汎用ソフトでも金額を並べた請求書は作れますが、車両や履歴とのつながりは人が手で補うことになり、車検証や過去伝票を探す時間と転記ミスが残ります。2023年10月1日に始まったインボイス制度で記載事項が増えたため、請求書の様式を制度に合わせて保守できるかどうかも、ソフトを選ぶときの判断材料になりました。
インボイス制度で請求書に必要な6つの記載事項
国税庁のQ&A(問25)によると、適格請求書の様式は法令で決まっていません。次の6項目が書かれていれば、請求書でも納品書でも領収書でも適格請求書として扱われます。整備工場の請求書に当てはめると、気をつける点は次のとおりです。
| 記載事項(国税庁Q&A 問25) | 整備工場の請求書で気をつけること |
|---|---|
| 発行事業者の氏名または名称と登録番号 | 登録番号は「T」と13桁の数字。法人はTと法人番号です。様式に固定で印字できるか |
| 取引年月日 | 月締めでまとめて請求するなら、その期間(例:10月1日〜10月31日)でもよい |
| 取引内容 | 部品名や作業名。軽減税率の対象があればその旨。整備では通常あまり出てきません |
| 税率ごとに区分した合計額と適用税率 | 10%対象の合計を出す。立替金は課税の合計に混ぜない |
| 税率ごとに区分した消費税額等 | 端数処理は請求書1枚につき税率ごとに1回 |
| 交付を受ける事業者の氏名または名称 | 法人のお客様やリース会社あての請求では宛名が必要 |
見落としやすいのが端数処理です。Q&A(問57)では、消費税額の1円未満の端数は「一の適格請求書につき、税率ごとに1回」処理するとされ、明細の行ごとに消費税を計算して切り捨て、それを合計する方法は認められていません。切り上げ・切り捨て・四捨五入のどれを使うかは任意です。古いソフトや自作のエクセル様式で、明細行ごとに税額を出しているものは計算式を見直す必要があります。
簡単な様式で済む「適格簡易請求書」(宛名を省略できる)の対象は、Q&A(問24)で小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業などと示されています。自動車整備業はこの例示にありません。店頭でオイル交換を受けるような取引でも、整備工場の請求書は宛名を入れた適格請求書を基本に考えておくと安全です。
適格請求書の記載事項と端数処理
インボイス制度の適格請求書に必要な記載事項は6つです。発行事業者の名称と登録番号(Tと13桁の数字)、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した合計額と適用税率、税率ごとの消費税額等、交付を受ける事業者の名称で、国税庁のQ&A問25に示されています。様式は自由で、6項目がそろっていれば請求書でも納品書でも構いません。消費税額の端数処理は、請求書1枚につき税率ごとに1回と決められており(Q&A問57)、明細行ごとに税額を出して合計する方法は使えません。整備工場の請求書ソフトを選ぶときは、この計算が初めから組み込まれているかを確かめます。
車検の法定費用と整備代金を請求書で分ける方法
車検の請求には、整備工場の売上になる点検料・整備代金・部品代と、お客様が納めるべき税や手数料を工場が立て替えた分が並びます。国税庁の質疑応答事例「嘱託者から受領する立替税金、手数料等の取扱い」は司法書士の例ですが、法令上相手方が納めるべき税や手数料を立て替え、立替金であることを明らかに区分して請求し受け取っている場合は、報酬に含めず不課税にできると回答しています(消費税法基本通達10-1-4(注))。
この扱いを受けるには、請求書の上で立替金がはっきり分かれていることが前提です。整備代金と立替金を一つの合計にまとめてしまうと、どこまでが課税の対象かが請求書から読めなくなります。整備の請求書ソフトでは、法定費用を課税の明細と別の欄に置き、課税の合計と消費税額の計算から外せるかを確かめてください。どの費目を立替金とするかは工場ごとの処理にもよるので、決めるときは顧問税理士と確認しておくと後で迷いません。
車販の請求では扱いが変わる費目があります。国税庁の質疑応答事例「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」では、中古車販売で未経過分の自動車税相当額や自賠責保険料相当額を車両本体と分けて表示しても、それらは譲渡の対価に含まれる(課税)とされています。一方、リサイクル預託金相当額は金銭債権の譲渡として非課税です。整備と車販を同じ会社でしている場合、同じ「自賠責」という名前でも、車検の立替えと中古車販売の未経過分とでは扱いが違う点に気をつけてください。
車検の法定費用を立替金として区分する考え方
車検の請求書では、課税される整備代金と、お客様が納めるべき税や手数料を工場が立て替えた法定費用を分けて記載します。国税庁の質疑応答事例は、法令上相手方が納めるべき税や手数料を立て替え、立替金だと明らかに区分して請求・受領している場合は報酬に含めず不課税にできるとしています(消費税法基本通達10-1-4(注))。ただし中古車販売で受け取る未経過分の自動車税相当額や自賠責保険料相当額は、区分表示しても車両代金の一部として課税されます。請求書ソフトには、立替金を課税の合計から外して表示できる欄があるかを確かめておきます。
インボイス経過措置の控除割合80%→70%→50%→30%
インボイス制度では、適格請求書を出せない免税事業者などからの仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。ただし一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。令和8年度の改正でこの割合が4段階に変わり、国税庁のQ&A(問113、令和8年4月改訂)は次の表のとおりになっています。インターネット上には「80%のあと50%」と2段階で説明した古い記事も残っているので注意してください。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
加えて、一つの免税事業者等からの仕入れの合計額には上限があります。令和8年10月1日以後に開始する課税期間は、1者あたり年間(事業年度)税込1億円を超えた部分に経過措置が使えません。その前の令和6年10月1日から令和8年9月30日までに開始する課税期間は税込10億円でした。経過措置を使うには、帳簿に「80%控除対象」「免」などと経過措置の対象である旨を書き、請求書等も保存しておく必要があります。
整備工場で関係しやすいのは、外注の板金や陸送、個人の整備士への作業委託など、相手が免税事業者のままの取引です。2026年10月以降は控除できる割合が70%に下がるため、同じ金額を払っても納める消費税が少し増えます。車販で消費者から下取りや買取りをする場合は別の扱いで、Q&A(問106)は、古物営業法の許可を受けた古物商が適格請求書発行事業者以外から古物を買い受けたときは、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除ができると明記し、中古車販売業を例に挙げています。
売る側の小さな整備工場にも期限つきの特例があります。免税事業者から適格請求書発行事業者になった事業者は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む課税期間について、売上税額の2割を納める「2割特例」を使えました(問114)。その後の令和9年分と令和10年分は、個人事業者に限って売上税額の3割を納める「3割特例」が設けられています(問114-2)。法人の整備工場は3割特例の対象外なので、申告の方法は顧問税理士と早めに決めておきます。
インボイス経過措置の控除割合(令和8年度改正後)
免税事業者などからの仕入れについて仕入税額相当額の一定割合を控除できるインボイスの経過措置は、令和8年度改正で4段階になりました。国税庁Q&A問113(令和8年4月改訂)では、令和5年10月1日〜令和8年9月30日が80%、令和8年10月1日〜令和10年9月30日が70%、令和10年10月1日〜令和12年9月30日が50%、令和12年10月1日〜令和13年9月30日が30%です。令和8年10月1日以後に開始する課税期間は、一つの仕入先あたり税込1億円を超えた部分には使えません。適用には帳簿への「80%控除対象」などの記載と請求書等の保存が要ります。
請求書の写しの保存期間と修正・返還インボイス
請求書は出して終わりにできません。Q&A(問79)では、適格請求書発行事業者は交付した適格請求書の写しを、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を過ぎた日から7年間保存しなければならないとされています。整備ソフトで作った請求書を紙で渡した場合でも、要件を満たせば写しをデータのまま保存できます(問80)。その要件は、システムの説明書類を備え付けること、画面と紙に速やかに出力できること、取引年月日などの範囲で検索できること(または税務職員のデータ提示の求めに応じること)です。
- 誤りに気づいたとき:修正した適格請求書を相手に交付する義務があります(問33)。全項目を書き直したものを出す方法と、元の請求書との関係を示して修正点だけを書いたものを出す方法が例示されています
- 値引きや返品をしたとき:返還インボイス(適格返還請求書)の交付が必要です。ただし対価の返還等が税込1万円未満なら交付義務は免除されます(問28)
保存期間が7年あるということは、請求書の元になる伝票データを誰でも消せる状態にしておくと困るということでもあります。伝票の削除を役職者だけにする設定は、整備ソフトの権限設定で詳しく扱っています。
適格請求書の写しの保存期間と修正の方法
適格請求書発行事業者は、交付した請求書の写しを、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存します(国税庁Q&A問79)。整備ソフトで作成したデータで写しを保存する場合は、システムの説明書類の備付け、画面と紙への速やかな出力、取引年月日の範囲での検索などの要件を満たします(問80)。交付した請求書に誤りがあれば修正した請求書を交付し(問33)、値引きや返品の返還インボイスは税込1万円未満なら交付義務が免除されます(問28)。伝票を後から消せる人を限っておくと、保存義務との食い違いを防げます。
自動車整備の請求書ソフト選びのチェックリスト
ここまでの内容を、ソフトの画面やデモで確かめる項目にまとめました。資料だけでは分からないことが多いので、自社の請求書を1枚持ち込み、同じものを作ってもらうと違いがよく見えます。
| 確認項目 | 望ましい状態 |
|---|---|
| 車両との結びつき | 登録番号や車台番号から、整備履歴と請求書をたどれる |
| インボイスの記載事項 | 登録番号の印字、税率ごとの合計と消費税額が自動で出る |
| 端数処理 | 請求書1枚につき税率ごとに1回で計算される |
| 法定費用 | 立替金を課税の合計から外し、別欄で表示できる |
| 修正と返還 | 修正した請求書を作り直せる。値引きを伝票で処理できる |
| 保存と検索 | 取引年月日の範囲で請求書データを検索し、画面と紙に出せる |
| データの持ち出し | 伝票と入金の明細をCSVで出してエクセルで集計できる |
| 制度改正への追従 | 改正のたびのアップデートが無料か、有料か |
最後の項目は、見積りの段階で聞いておきたいところです。インボイスの経過措置のように、制度は数年おきに変わります。改正のたびに有料の更新が要るソフトは、長く使うほど総額が膨らみます。
整備システム・整備ソフト DREAM POWER は、インボイスのほか、OSS(電子申請)、電子車検証、エーミング、OBDに対応しています。アップデートは月に1〜2回程度、行政改正や業界のニーズに合わせて行い、料金はかかりません。1台あたり1〜3分程度で、ソフトの画面から自分のタイミングで実施します。利用者からは「前のソフトはCDで届く上に都度有料だった」という声も寄せられています。伝票は172項目、入金は57項目をCSVで出力でき、エクセルで自社の様式に集計できます(CSV出力の使い方)。
料金はサブスク(月払)で、1台目が月額6,000円(税別)/6,600円(税込)、2台目が2,000円(税別)/2,200円(税込)、3台目以降は1台につき1,000円(税別)/1,100円(税込)です。別途初期費用がかかり、有料オプションによって月額は変わります。リース契約を組まずに導入でき、従来どおりの現金一括払いやリースにも対応しています。詳しくは料金表をご覧ください。インボイスに絞った整備システムの解説は、姉妹サイトのインボイス対応の整備システムにまとめています。
整備の請求書ソフトを選ぶ前に確かめる項目
自動車整備の請求書ソフトを選ぶときは、車両との結びつき、インボイスの6つの記載事項、請求書1枚につき税率ごとに1回の端数処理、法定費用を立替金として別欄に出せるか、修正と返還の請求書が作れるか、取引年月日で検索できるデータ保存、CSV出力、制度改正のアップデート費用の8点を確かめます。インボイスの経過措置は2026年10月1日に控除割合が80%から70%に変わったように、制度は数年おきに改正されます。アップデートが無料かどうかで、5年、10年と使ったときの総額が変わります。
請求書以外も含めた整備ソフト全体の比べ方は自動車整備ソフトの比較で失敗しないチェックポイントで解説しています。
よくある質問
- インボイスに対応した自動車整備システムなら、法定費用は自動で非課税になりますか?
- ソフトが判断して自動で非課税にするわけではありません。国税庁の質疑応答事例では、相手方が納めるべき税や手数料の立替金を明らかに区分して請求・受領している場合に不課税にできるとされています。ソフトでは立替金を課税の明細と別欄に置けるかを確かめ、どの費目を立替金とするかは顧問税理士と決めてください。
- 2026年10月から免税事業者の外注先への支払いはどう変わりますか?
- 国税庁Q&A問113(令和8年4月改訂)により、令和8年10月1日から令和10年9月30日までの仕入れは、仕入税額相当額の70%を控除できます。それまでは80%でした。令和8年10月1日以後に開始する課税期間は、一つの仕入先あたり税込1億円を超えた部分には経過措置が使えません。
- 車屋の請求書は宛名を省いたレシート形式でもよいですか?
- 宛名を省略できる適格簡易請求書の対象は、国税庁Q&A問24で小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業などとされ、自動車整備業は例示されていません。整備の請求書は、宛名を入れた適格請求書を基本にしておくと安全です。
- 整備ソフト おすすめの選び方で、インボイス以外に見るところは?
- 車両と整備履歴と請求書がつながっているか、伝票や入金をCSVで出せるか、制度改正のアップデートが無料かを見ます。整備システム・整備ソフト DREAM POWER はアップデート無料で、伝票172項目と入金57項目をCSV出力できます。
- 整備システム リースなしで導入できますか?
- 整備システム・整備ソフト DREAM POWER はサブスク(月払)で、リース契約を組まずに導入できます。月額は1台目6,600円(税込)、2台目2,200円(税込)、3台目以降1台につき1,100円(税込)で、別途初期費用がかかります。現金一括払いやリースも選べます。
出典・参考資料
- 国税庁「インボイス制度特設サイト」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm - 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和8年5月改訂)問18・問24・問25・問28・問33・問57・問79・問80
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf - 同Q&A「経過措置」問113・問114・問114-2(令和8年4月改訂)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-15.pdf - 同Q&A 問106 古物商等の古物の買取り等(令和8年5月改訂)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-13.pdf - 国税庁 質疑応答事例「嘱託者から受領する立替税金、手数料等の取扱い」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/14/08.htm - 国税庁 質疑応答事例「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/41.htm - 日本カーネット株式会社「整備システム・整備ソフト DREAM POWER サブスク」料金・機能
https://sub.j-carnet.co.jp/
記載内容は2026年10月7日時点で公表資料を確認したものです。料金・機能は日本カーネットの資料請求・デモ申込で最新の内容をご確認ください。
整備ソフトを、人数分。サブスクで。
整備システム・整備ソフト DREAM POWER をサブスクでご利用いただけます。1台目は月額6,600円(税込)、2台目は2,200円(税込)、3台目以降は1台1,100円(税込)。リース契約を組まずに始められます。いまの台数と使い方をお聞きして、月々の費用をご案内します。
お電話:03-5256-7877平日 9:00〜12:00・13:00〜18:00







